第9回ウディコンに参加しての一連の活動から、沈没して約一年。
いろいろあってゲーム制作はあんまり進まなかったのですが、
プレイヤーとしてはたくさん名作に出会えました。
(ゲームは中断も再開も簡単だから気楽に始められるけど、
ゲーム制作はバックアップとってもルールが複雑すぎてどれが何したやつだっけ
これとこれマージしてそれから……これどこまでやったっけ……
みたいに考えること多いから実質ロードできないし、
そうするときっちりパーツをくみ上げる
イメージとエネルギーがないと始められない……。)
OCTOPATH TRAVELERもその一つ。
あ、今回の記事もネタバレを含むのでご留意ください。
テリオンというキャラクターがいます。
彼は盗賊で、例えレベルが1の状態でも、
試してみたくなる確率で高ランクの装備を"盗む"ことができます。
OCTOPATH TRAVELERのすごいところの一つは、
バランス崩壊を過度に恐れていないところです。
普通のゲーム制作者なら、最初のマップに隠し宝箱があって、
その中のアイテムを使うとラスボス手前までの敵を楽々倒せるようなゲームは
作らないか、クソゲーとして作るでしょう。
OCTOPATH TRAVELERは、これと似たようなことが仕様上可能になっています。
最初から行ける街の一つに準最強装備の金の斧が隠されていたり、
学者を仲間にすることで終盤のマップにほとんどレベル上げなしで乗り込めたりします。
しかし、これで実際にバランスが崩壊したかというと、実はそうでもない。
RPGで、成長に必要な要素は何でしょうか。
昔ながらのドラクエとかポケモンとかをやっていれば、
まず「レベル上げ」が思い浮かぶと思います。
しかし、実はそれは手段の一つでしかありません。
昔ながらのドラクエやポケモンだって、
「探索」によって装備や技マシンを発見し、強くなることができたはずです。
ただ、それがそこそこの(レベル上げを不要にしない)範囲に収まっていただけで。
制作者の立場にあると、全ての要素を知ってしまいながら
バランス調整することになります。
そのため、その時点で入手可能な強い装備があれば、
それを基準に考えてしまいがちです。
ですが、今更普通にレベル上げして、普通に装備をそろえて、
普通に苦戦するゲームを作って、面白いでしょうか。
もちろん、それで面白くなるように意識的に作るのならありだと思いますが。
OCTOPATH TRAVELERは、つまり、探索だけでも強くなれるゲームです。
テリオンがレベルによらず(もちろん、レベルが上がればより簡単に)
強い装備を入手できるにも関わらず、
これを初めて遊ぶ人がヌルゲー・クソゲーと認識しないのは、
装備の入手が可能なだけであって、
実際にはそのために時間をかけて自らの力でそれを発見しなければならないからです。
そこには、レベル上げするか、探索するかの違いしかなく、
低レベルでクリアできることに何の問題もないのです。
本当に強い装備を隠しぬくだけのデータ量があることもあって、
OCTOPATH TRAVELERは、新しい発見があるたびに
新しいシナリオを思いつけるゲームになっています。
それは最初は、新しい宝箱、新しい「盗む」対象、新しい「探る」対象にすぎず、
ちょっと火力が上がるとか防御が上がるとかなのですが
(一周目はこれだけでも嬉しいし楽しい)、
そこに精霊石みたいな消費アイテム、傭兵呼びという消費型の強行動が組み合わさり、
一つ一つの発見が有機的につながって、
あのボスはこんな序盤からワンターンキルできるとか、
あのボスはこんな低レベルでも突破できるとか、
どんどんシナリオが更新されていくのです。
エンカウントしない最低歩数とかいう仕様も、
初めからプレイヤーに通知されてしまえばバランス崩壊待ったなしですが、
通常はゲームの快適さに多大な貢献をするだけである一方、
悪用(?)するのはゲームを遊びつくしたTAランナーくらいのものなので、
むしろ周回プレイを面白くするエッセンスになっています。
戦闘システムもよくできています。
詳しくは別の機会に書くかもしれませんが、
行動順が運次第なのに重要だから操作できる行動が用意されていたり、
デバフが確定で入って強力なのでその本分(つまり強敵対策)を全うできたり、
どんな強敵にも条件を満たせば行動不能&防御ダウンを入れられたり、
それによって各属性やそれを扱える職業に個性(ボスとの相性)が生まれたり、
連続攻撃に特有の強みが生まれたり、
レベル・パラメータ依存じゃない消費型の火力ソースがちゃんと用意されてたり、
あとSEが神。
PC環境の都合で、最近フリゲを遊ぶときは(実は制作も)音無しでやっているのですが、
OCTOPATH TRAVELERのおかげで、どんなにもったいないことをしていたか気付かされました。
S-Witchbのときも、音回りが微妙なのは指摘されてましたね……。
例によってとりとめがないのですが、OCTOPATH TRAVELERは、
● 制作者視点でのバランス崩壊に囚われず、探索による成長ができる
● それにより、周回プレイ時はシナリオがどんどん更新されて飽きない
● ハイクオリティの映像・音声・物語で構成された
RPGなのです。
いくつかの動画サイトで確認できますが、1時間を切るレギュレーションのRTAもあるみたいですね。
体験版で3時間でこんなに進んだスゲーとかやってた頃が懐かしいです。
ゲーム制作をするとき、制作者の自分も楽しめるものをと思っているのと、
短編しか作れない障害を抱えているので、だいたい周回プレイを想定するのですが、
シナリオの概念の発見は本当に大きな一歩だったと思います。
あとは、限られたデータ量で奥深い探索ができるシナリオ空間(ぱっと見わからないシステム)が作れれば、データ埋めるだけ状態になれる。
そのために、
● シナリオ構築のための、明確に強調されるルール
● シナリオ更新のための、探索が必要な隠された要素
● 一長一短の個性:障害(ボス)の弱点や行動パターン、それに応じて生まれる選択肢ごとの得手不得手
● それを不確定にする乱数
このあたりを意識してデータを作っていけばいいし、
それを前提にしてシステムを作っていきたいなと。